清水ひろみさんのヴォーカル、多田恵美子さんのピアノ

東梅田のJazz on topで、清水ひろみさんのヴォーカル、多田恵美子さんのピアノを聴く。

清水ひろみさんの歌は、ジャズとしてはブラックではないし、誰か先人の癖を模倣して組み合わせたようなスタイル模倣になることもなく、意図的に特徴を強めて個性を演出するようなところもなく、なんと言うべきか、すばらしく自分の声質を生かして率直に自然に歌っている。
ジャズという音楽の置かれたもともとの環境、もともとの社会的立場を想像し、多くの日本のジャズは、いわばクラシックの演奏家がヨーロッパ音楽になりきろうと真似するように、アメリカのジャズに近づこうとしてきたのだろうと想像する。
でも、ジャズという音楽のスタイル、語法を自分の身近な音として、素直に自分の歌を歌い、自分の音楽を作るということを、特別な気負いを感じさせずにできる成熟時期が日本のジャズにもきているのだろう。
清水ひろみさんのヴォーカルは、日本人女性の声質の美点を率直に出して、無理にジャズ的なポーズで損ねない。同時に、洗練された多彩なジャズで、細部まで磨き抜いてコントロールされた冷静さで声を聴きながら歌っている。
聴いていると、不思議なほど心静かに落ち着いてくる。

多田恵美子さんのピアノが、ヴォーカルの陰影に敏感に反応する多彩さも楽しい。