フィラデルフィア管弦楽団

5月25日は、兵庫県芸術センターで、フィラデルフィア管弦楽団を聴く。
エッシェンバッハ指揮。
前半は五嶋みどりの独奏で、ブリテンのヴァイオリン協奏曲。
後半はショスタコーヴィチ交響曲第5番。

ブリテンのヴァイオリン協奏曲は名作なのだが、なかなか実演で聴く機会はない。
甘美で華麗な協奏曲というのとは対極にあるような協奏曲。
この曲は、いささか苦しそうに狭い音域でぎくしゃくと打ち付けるような重音と、ふっきれないスピード感、パッサカリアなど古楽的な枠組みを借りての20世紀的な思考の流れの表現が魅力で、ドイツ音楽などの個人的表現主義の不安感や恐怖感とは異なった、もっと社会的で場漠然とした不安を反映したような、いささかドライな曲だというのが作曲者指揮のCDでの印象だったが、五嶋みどりの艶やかな細い糸が連なっていくような美音と、豪華なオーケストラと、ホールの残響の豊かさの為か、むしろ、瞑想的で細かい心理表現のうつろいの音楽のようであった。

ショスタコーヴィチは、オーケストラのあまりに豪華な響きと華麗さ、リッチな弦の為に、見事なアメリカ資本の豪華エンタテインメント、ショービジネスを見ているようであった。・・・そのとおりであるが・・・。
何か時代背景、作曲家自身の状況から切り離された豪華な音楽に聞こえて切実さが感じられない。