原子力の安全は、夢想的な理想主義者の夢

原子力は安全でコストの安いエネルギーだと、この現状を前に言うのは、夢想的な理想主義者である。安全な原子力が可能というのは精神論的技術観にすぎない。

福島原発は例外的事故で他の原発は今後は事故を起こさないと考えるか、現状維持すればいつかどこかで事故を起こすと想定するか。私自身は、過去の事故発生率から計算すると、今後数十年のうちに、また別の原発で大きな事故があると想定する。

化石燃料での発電時のCO2の固定とか、再生可能エネルギーと蓄電による平準化とコストダウン、省エネの技術的制度的課題への難しさよりも、放射性廃棄物の無害化とか永久的封じ込めとか完全な災害対策やヒューマンエラーの永久的回避という課題を解決する難しさは遥かに技術的にもコスト的にも実現が困難である。

高速増殖炉の実用化も放射性廃棄物の完全封じ込めも、すでに技術的にも、採算性とも挫折している。挫折した技術に将来の経済を依存し続けるのは現実的ではない。

関西電力取締役会の意見
「当社は今後とも、エネルギーセキュリティや経済性、環境性を総合的に勘案したうえで、安全・安定運転の確保を大前提に、原子力を中心とした最適な電源構成を構築し、持続可能な低酸素社会の実現を目指すこととしております。」「当社は、国の原子力利用に関する基本的な方針を踏まえ、ウラン資源の節約、環境適合性の観点から、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効活用するという原子燃料サイクルを推進しております」

この取締役会の意見は説得力がない。「安全・安定運転の確保を大前提」にと言っているが、この大前提を現実に確保できる保証が示されていない。このようにリスクマネジメントの正常な判断ができない取締役会に不満を感じる。
関西電力の取締役は、東京電力の株価と企業価値原発の後、どうなったか認識しているのだろうか?
次の事故が自社で発生する前に、事故発生のリスクと放射性廃棄物コストを抱えた原発への依存を出来る限り急速に減らそうとスピーディーな経営判断を行うのが取締役の責任だ。

電力会社の株主総会招集の案内が、個人株主のところへも届く。原発のリスクを今回の事故で認識できた方は、これに付いている議決権行使書を決して無駄にしないようにするべきだ。

原発推進をするなら放射性廃棄物の無害化技術を開発してからにすべきだ。現実は人類は無害化技術の原理さえ発見できていないし、密封技術さえ実現していない。
油を使うのに中和する消火剤も、漏れた時に掬える柄杓も無いようなものである。