原子力発電への評価のまとめ

原子力発電への評価について

・本来、Co2削減の目的は地球温暖化の防止である。温暖化防止効果については、Co2排出を遠因とする大気の組成変化の2次的結果である気温上昇だけではなく、その施設が直接排熱することによる気温上昇も、温暖化への影響要素として計算しなければならない。原子力発電の場合、ウラン採掘から放射性廃棄物処理までの全プロセスのCo2排出を評価すると同時に、運転時の温排水が海水温を上昇させる直接の温暖化効果も評価しなければならない。結果としては、原子力発電は発電時のみCo2排出は比較的少ないが、環境への熱量放出が非常に大きい設備であると考えられる。

原発の発電コストの計算には、事故時の損害賠償額も原価計算に入れて比較しなければならない。

原子力発電の事故は、日本の農業、畜産、水産、工業生産物へのダメージが大きく、仮に放射線量が比較的軽微であったとしても、すべての日本製品のブランドイメージを致命的に損なう危険を伴っている。

原子力発電の事故は、日本の観光産業に致命的な影響を与える。

原発依存を続ければ、福島原発レベルの事故が数十年に1回は起こるとリスク評価しなければならない。

・放置状態、破壊された無管理状態に置かれることを想定し、デフォルトとして停止しない危険な装置は作らないというのが、安全基準であるべき。

・危険物の保管絶対量を制限するリスクマネジメントからも、今回の事故で、原子力発電の扱う放射性物資の危険と量が、リスクマネジメント的に企業など人的組織や、技術的、耐久性、コスト性など様々な面で、企業や国など人的な組織が永久的に安全にコントロールできるレベルではないことが判明した。

放射線の汚染による、国土の事実上の喪失は、たとえ時間的に限定されていたとしても、金額換算が不可能な巨大な損失である。

福島原発以外の各原子力発電所においても、放射性物質の漏洩事故発生リスクを無くする万全の対策が立証されていない。また、各発電所の安全管理を行う電力会社、関係行政組織等の管理能力の完全性を証明することができていない。

・各発電所は今回の事故を受けて電源喪失を想定した設備増強や、訓練を行っているが、直下型地震、火災、あるいは短時間での爆発的な事故、津波被害により原子力発電所のスタッフが死亡・負傷するなどして発電所を管理する業務を遂行できない場合は想定できていない。

原子力発電所の事故は、広域に影響をもたらすリスクが顕在化した。例えば福井県で同規模の事故が起こった場合、びわ湖等も汚染され、放射性物質の拡散は、海上ではなく偏西風にのって中部日本に広く及ぶと考えられる

原子力発電は、熱によってタービンを回す、発電原理的には、旧世代に属する技術であり、ウランは輸入燃料であり、国内に廃棄・保存場所が確保されていない。

原子力発電所が、軍事的攻撃、あるいはテロ等で管理運転を行う人員を奪われるなどした場合、冷却運転が行えないだけで危機的状況に陥る、きわめて安全保障上脆弱な設備であることが明らかになった。

・比較的多くの国民が、今回の福島原発事故を見ても、原子力発電は比較的安全で必要だと判断しているが、これは、長年にわたり原発のリスクとコストを隠す電力会社や関係組織、国等の広報活動が流布してきた情報に基づいた判断であって、あらためて正しいすべての情報を国民に十分に伝えてから、国民の判断を仰ぐべきである。

・次世代の発電技術への開発投資、設備投資がシフトするビジネス環境の中で、原子力施設関連企業(電力会社、メーカー、施工関係など)の、旧技術へ固執するセクションへの保護は、次世代技術への投資を遅らせ、日本の経済・技術競争力を損なうものである。