In the Mistsを聴く

5月にひきつづき今回も加藤チャーリー千晴氏が、私のピアノ曲を取り上げるということで聴きに行きました。
「アトリエの古い画帳」から「教会の尖塔」と「ワルツの余韻」
「風変わりな場所」から「渓流の略奪点」と「猪達のいる所」
という、風変わりな選択。「教会の尖塔」はロシアか東欧あたりの教会の鐘がガンガンとなりまくっているような思い切った演奏。「ワルツの余韻」は記憶の断片が置かれていくような感覚。
「渓流の略奪点」は、運動エネルギーを感じさせるタイプの演奏解釈(対極的には極めて静的な印象の演奏も可能な曲なのだ)。「猪達のいる所」は、風変わりな和音を確かめるように進んでいく演奏。

新作委嘱シリーズは、平石博一氏。
ご本人は、急用とかで来場されず。
ミニマルとはいっても、アメリカの厳格なミニマルではなくて、甘口の環境音楽にもなりかねないすれすれの抒情的な和声様式になる危険も避けようともせず、悠然と作曲者の好きなようにやっているというような音楽と感じました。

バルトークコダーイも加藤チャーリー千晴氏の個性的解釈で、100年前に、東欧の石造りの古い家の中で、暗いランプを灯して、ピアノを探る作曲家達を見ているような気分になる。
これは、この空間の内装や照明や雰囲気もあって強められる。

しかしながら、今回は、後半がおそるべきものだった。

伊藤洋子さんの、だんだん極端な表現が強度をあげて限度を超えてひっくり返ってマイナスになるような感覚が面白かったのと、その過剰なほどの緊張感をひっぱってつなげるピアノの抑制された緊張のコントロールの造形が印象的でした。

御手洗花女さんの朗読は、映画を観ているような映像的生々しさを感じた。
実在した場所の空気のような。
ピアノが、その部屋の近所の家から偶然、洩れ聞こえて来たピアノの音の記憶のようにまとわりついていた。



In the Mists

2009年7月16日(木)

OPEN19:00 START19:30

Host:加藤チャーリー千晴(ピアノ、DJ)

Guest:

伊藤洋子<まほまほファミリー>(朗読)

御手洗花女<母檸檬>(朗読)

1.加藤ピアノソロ

G.F.ヘンデル

前奏曲短調

近藤浩平

アトリエの古い画帳op89より

風変わりな場所op97より

平石博一

WINTER(委嘱新作)

B.バルトーク

3つのハンガリー民謡

民謡による3つのロンド第3番

Z.コダーイ

7つのピアノ小品から

2.加藤+伊藤洋子デュオ

3.加藤+御手洗花女デュオ

charge 500円+1drink

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