8月6日は広島への原爆投下の日

8月6日は、アメリカが広島に原爆を投下した日である。
世界中で、核兵器を実戦に使用したのはアメリカ合衆国だけである。核実験を行った国は数多く隠された被害が沢山ある。

さて、私の作品に、ピアノ連弾の為の組曲「島」という曲があります。
この曲の原曲は広島への原爆投下後、被爆者が戦後どのように生きてきたかを題材とした芝居の為の劇伴音楽です。

堀田清美作の戯曲「島」は、『戦後初めて原爆体験を本格的に取り上げた記念すべき作品。昭和26年、瀬戸内の島での静かな日常生活を描きながら、被爆者栗原学を通して、人間の生命の尊さを訴え、原爆を、戦争を、厳しく告発した名作です。(劇団神戸自由劇場チラシから)』
「島」は、第4回岸田国士戯曲賞(当時の名称は「新劇戯曲賞」)を受け、劇団民藝が1957年に上演、その後、様々な劇団によって上演されてきた原爆をテーマにした演劇の古典とされる作品です。劇団民藝による上演は、オリジナルの劇伴音楽を使用しない演出でしたが、劇団神戸自由劇場による2001年2月の上演の際、劇伴音楽作曲の機会が与えられました。
劇伴音楽は、シンセサイザーを使用し、デスクトップPCで全て自作しましたので、私の唯一実演で公表した「電子音楽作品」(←現代音楽関係者以外は使わない、いかにも古めかしい言い回しだ)です。

音楽は、瀬戸内海地方の民謡などにヒントを得た音の身振りをもった旋律やリズムの素材と、
ひたひたと波打つ海のイメージをもたらす、揺れるような静かに迫るような周期をもったパルス(4+3+6を主にしている)、日本民謡などの歌い方に特徴的な節の引き延ばしをパルスと組み合わせることで強く意識させる手法、ガムラン的なアンサンブルの組立て、不安定なまま切れ目無く執拗なリズムで突き進む強靱な線、といったものによっていて、私の作品としては珍しい、日本ーアジア的なものと、20世紀の戦争に直接に関わる不安と死と生存についての音楽、瀬戸内海の島という非常にローカルな民俗色、瀬戸内海の美しい夕暮れ感の情景描写をもった特別なものとなっています。

この劇伴音楽を素材に、ピアノ連弾の為の組曲を再作曲したものが、ピアノ連弾の為の組曲「島」です。電子音楽を素材に再作曲されたピアノ連弾曲ということになります。
この作品は、国際ピアノデュオコンクールの作曲部門で入選し、何度か再演もされていて、(株)マザーアースから楽譜が出版されています。

マザーアースのサイトは下記。ネットで楽譜購入可能です。
http://www.mother-earth-publishing.com/

マザーアースからの出版楽譜には、中井恒仁さん、武田美和子さんの素晴らしいデュオによる録音のCDが付いています。
この連弾の組曲には、反戦の為の機会音楽という雰囲気はなく、純粋に美しい瀬戸内海の音楽として聴くこともできます。

8月6日は広島への原爆投下の日。
私の願いとしては、この作品は、日本ではもちろんだが、アメリカやフランスなど核兵器を装備する国の演奏会で、ことさら騒がず、美しい日本のピアノ作品として静かに聴かれることで、世界の人々に、原爆はどんな土地のどのような人々の生活の上に落とされたものなのかを静かに認識させる音楽であってほしいと考えている。
残念ながら、まだ広島、長崎でも演奏されてはいないし、海外でも演奏されていない。いくらか自分で動ける範囲で演奏機会を探しているが、思うようには演奏機会が増えないままである。ピアノデュオ演奏者には、是非、取り上げて欲しいと願っている。


この作品について、長崎県在住の詩人、森永かず子さんが文章を書かれています。
下記、URLで読むことができます。
http://www.h2.dion.ne.jp/~ondine/ongaku-tinmokunosima.htm