アンリ・トマジの音楽

アンリ・トマジの音楽は、トランペット奏者にはトランペット協奏曲が知られているし、典礼風ファンファーレなどが演奏されることもある。
合唱曲も「12のコルシカの歌」は名曲だ。

とはいえ、その素晴らしさのわりには、聴かれる機会は少ないように思われる。
ミヨーやジョリヴェのような強烈な個性的様式というわけではなく、アカデミックな穏健さというのでもない。
この自然さ、過剰な装飾がないシンプルさ、新奇さは狙わずに、しかも意外な美しさの発見が沢山ある。
民衆的な生命力を目指していながら、そこに民族主義的集団意識や近代国家の危うさではなく、同じ土地に一緒に生活する人間としての共感とノーブルな連帯感のような自然なものがある。