ピアノ協奏曲の作曲のあたって影響を受けた音楽

昨年、ピアノ協奏曲を書くにあたって参考にした作品、何らかのヒントや着想につながった音楽、あるいは漠然とした雰囲気的なものまで何らか影響を受けたと思われる音楽を列記してみる。


ホルスト
グドン・ヒース、惑星(特に土星以降)、イエス賛歌、合唱幻想曲、フーガ風序曲、ハマースミス
ヴォーン=ウィリアムス:
フロス・カンピ、交響曲第6番
ブリテン
チェロ交響曲
シベリウス
交響曲第4番
プロコフィエフ
ピアノ協奏曲第5番・・・トッカータ的な断片性に惹かれながら書いた。
交響曲第2、5番、束の間の幻影
ティペット:
管弦楽のための協奏曲、3重協奏曲
P.M,デイヴィス:
聖トーマスの通夜
アーノルド・バックス:
交響詩「11月の森」・・・風変わりな和音連結
ヒンデミット
室内音楽のシリーズ、金管楽器と弦楽のための演奏会用音楽、4つの気質
フンメル:
ピアノ協奏曲イ短調ロ短調・・・とくにロ短調のホルン合奏とピアノの楽章
ルー・ハリソン
ピアノ協奏曲・・・キース・ジャレットが弾いている。
ヘンリー・カウエル:
管弦楽の為の変奏曲
ヒナステラ
ピアノ協奏曲1番、ハープ協奏曲、アルゼンチン舞曲
ブエルタス:
センセマーヤ、ガルシア・ロルカ
ブラームス
交響曲第1,4番、間奏曲など・・・第4番のパッサカリア、1番のティンパニの使い方
ショスタコーヴィチ
交響曲第2番、24の前奏曲、ヴァイオリン協奏曲第1番・・・ポリフォニックな書き方
ヴィラ=ロボス:
ショーロスの連作、バッキアーナス・ブラジレイラスの連作、ピアノ協奏曲第1〜5番など
ミヨー:
男とその欲望、交響曲第8番「ローヌ河」ほか
ウィリアム・シューマン
交響曲第3番
アイヴス:
ニューイングランドの3つの場所
デュティーユ:
メタボールピアノソナタ
ライヒ:ヴァリエーションほか
ルーセル
交響曲第3番
マルティヌー
交響曲第3番、4番、ピアノ協奏曲第3番
ストラヴィンスキー
春の祭典オルダス・ハックスレー追悼の変奏曲、ダンバートンオークス協奏曲、カンタータなど
リゲティ
ピアノ協奏曲
グラナドス
スペイン舞曲集
ジョリヴェ:
トランペット協奏曲、オンド・マルトノ協奏曲
トマジ:
トランペット協奏曲、12のコルシカの歌
シューベルトの歌曲・・・第3楽章のリズム等と旋律の繰り返し
およびシューマンのとくに歌曲リーダークライス作品39・・・第4楽章でのトランペットとピアノの部分
シマノフスキのとくにヴァイオリン協奏曲第1番・・・高弦のロングトーンなど
フィンジ:エクローグ・・・第3楽章の簡潔さのヒント
ニールセンの交響曲第3,4、5、6番・・・とくに第2楽章に4番、5番から影響あり
ピーター・スカルソープのサン・ミュージックなど
ミヒャエル・ハイドン交響曲



その他MPBでヴェロソ・カエターノ
フォークロア系でアリエル・ラミレス、ユパンキ
メキシコの民俗音楽、キューバ、ブラジルなど中南米もろもろ
チェニジアのスーフィズムの音楽
アイルランドの民俗音楽
この曲の着手前にはパプア・ニューギニアでシンシンなども見た。
パプア・ニューギニアには登山で行った。




この曲を書く前に、ロマン派や近代などピアノ協奏曲をやたらめったらCDコレクションして聴きまくったら、いわゆる協奏曲らしい華やかなパッセージにうんざりして、ヒンデミットの「4つの気質」の地味なピアノの扱いが好きになった(笑)。カルクブレンナー、モシェレス、ヘンゼルト、シャルヴェンカ、モシュコフスキ、マクダウェル、リトルフ、ヘルツ、ダルベール・・・華やかな2流協奏曲を聴きすぎた。




第1楽章の冒頭、ピアノの背景で鳴る木管主体に組み立てられた和音のテーマが、全曲を支配し、その和音テーマに含まれる声部進行が、パッサカリア主題となって全体を構築しています。このテーマは、中盤以降の和音のゆったりした変容を意味づける重要な素材である。
残念ながら初演ではこれがわかりにい状態になっている。
第1楽章中程から、音楽がこの和声のパッサカリア的な変容の中で、次第に、幅広く漂うようになっていますが、これを緊張感の後退ととるか、あるいはニールセンの交響曲で、クライマックスが次第にゆるやかに溶解して茫洋となっていくような箇所として受け取るかは聴く人によって大きく異なるでしょう。
この楽章の中間から以降、次第に音楽がゆるやかに漂っていくところは、音楽的には、
たとえば、ホルストの合唱交響曲やエグドンヒース、ヴォーン=ウィリアムスの交響曲第6番の最終楽章、ニールセンの交響曲第3番などのような美意識と感情に近いかと思いますが、おそらく、あまり日本でよく聴かれるレパートリーの中では馴染みのない共感しにくい音楽感情だと思います。
ホルストは「漂うということは重要なことだ」と言っています。
ピアノソロの部分の坦々としたリズムの渋い和声は、ホルストのエグドンヒースの冒頭主題のほとんど引用のような一種のオマージュ的な要素です。ヴォーン=ウィリアムスやブリテン、ティペットにも、こういう思索的なくすんだ音楽というのはよくありますね。
シベリウス交響曲第4番にもこういう感情表現に近い感覚を感じます。
最後のクライマックスに入る前の部分で、より深い静けさと、ピアノの漂流感によるppの印象的な部分となる・・・ピアノは、パッサカリア的な和声の漂う空間で、いわば海王星チェレスタを少しジャズ系のゆるやかな即興音楽っぽいリズムでつづったような部分。

第2楽章は各所でピチカートを駆使しています。
弦楽器群で各パートにピチカートを半拍間隔でアンサンブルさせるなどして、一つのパートでは難しい速度でのピチカートの組み合わせを各所で行っています。
高弦と開放弦の低音のピチカートの交替なども使っていますが、これは成功。
前半は密集した音の動きにより騒然とした感触、ゆるやかに広がる抒情的な中間部、フガート主体の後半部という構成。フガートは、ややショスタコーヴィチ的か、しかし、被さるピアノはヒンデミット的なきびきびした感じ。

第3楽章 冒頭ピアノが奏でるテーマはシューベルト的なものを意識した。ただ1箇所のトランペットソロは、フローラン・シュミットかメシアン初期のようなな宗教的な印象があるのではないかと思う。
高弦のロングトーンクラリネットロングトーンとも印象的で成功した思います。

第4楽章
3楽章までほとんど4拍子系で、最終楽章で変拍子が頻出してカスタネットなども登場しますが、ここは、ストラヴィンスキー的リズム処理と、アイリッシュあるいは中南米系の6拍子と、連符によるずれのミニマル的リズム効果を一体化したものです。
後半の長いトランペットのソロとピアノの部分は、くしかえしながら微妙に変化する表情を聴く箇所。これは歌曲集「木にかえる」の第2曲「反響」の引用。