雨飾山 団体登山ツアーと渋滞と集中

10月8日の夜行「きたぐに」に乗って糸魚川へ向かい、10月9日、雨飾温泉(梶山新湯)から雨飾山を越えて小谷温泉へ下った。
この時期、人が多いとの懸念もあったが、それを理由に避けてきたので、今だ登ったことがなかった山だ。(隣りの金山、天狗原山は登っているので山の姿は眺めたことはあったが。)
天候は思いの外回復しなかったが、朝夕に小雨に降られるものの雨具をだすほどでもない。
紅葉は地味であったが、雲の間に険しい海谷山塊の山々が一瞬姿を現したり、金山も望むことができた。北側からの登山道は比較的人は少なかったのだが、笹平に登りついた途端、大変な登山者の行列となり、山頂直下も下ってくる団体ツアーで大渋滞となった。
とくに笹平から小谷温泉への下りはじめでは1時間半ほどの渋滞となった。
紅葉の時期の3連休の真ん中、100名山とはいえ上越の中級山岳、この人の多さと渋滞は尋常ではない。
ほとんどの登山者は小谷温泉からの往復。
車、または観光バスで来る登山客は往復コースを取るので、近年はどこの山でも登山口と下山口が異なる縦断コース、縦走コースをとる人が少なくなり最短距離で車移動の楽なコースの往復に極端に集中する傾向が激しい。
登山地図で自分で計画をたてたコース選択ではなく、100名山のガイド本などで載っているコース案内どおりを順番にこなしている人が増えたので、よく売れている本や雑誌に載っている日程のままをたどる人が増えたのだろう。

しかし、以前は、登山客が多い山でも、ここまでの大渋滞は以前は起こらなかった。
ところが今回は1時間半以上も前に進まないという尋常でない渋滞となった。
笹平からの下山は途中2カ所ほと、北アルプスなどではいくらでもありそうな、ちっとした梯子のある岩場があるのだが、その手前に百人を優に越える数の登山者が列をなして止まっている。見下ろすと、その梯子の先の登山道には、100mおきくらいにまばらに数人が歩いている程度である。
上から岩場の先の登山道を見下ろしていると、下っていく登山者が、10mか20m間隔で数人つづいて降りていくときと、全く登山者の姿が途絶えて数百mの間、間隔が開いているときがある。
これは、この岩場の下り通過で、怖がってしまい身動きがとれなり、なかなか降りられなくなっている登山者がいると前の登山者との間が空いてしまうためしまうためだ。
個人の登山者なら、自分のレベルにあわせて登る山を選ぶのでこういう人はあまりいないのだが、旅行会社が100名山ブームにのって募集した大団体ツアーあるいは大人数のハイキングの会などでは、雨飾山がこんなに険しい山だとの知識もなくハイキングツアー感覚で参加してこうした人が混ざってしまう。
反対側の登山道から登りつくと、「へえ、こっちからも登る道があるんですか」と声をかけてきたりしてろくろく自分で地図も見ていないのが判る。

登山グループの中に初心者が混ざっていて、多少、後ろの人が待ったり前後の人が手助けしたりということ自体は、とくに問題ではない。
しかし、ここまで大団体で他の登山者の行動計画に支障をもたらすのは迷惑と言わざるを得ない。実際、この渋滞で私は予定の路線バス時刻に間に合わなかった。

たとえば、梯子やロープ、吊り橋などで一人づつしか通過できない箇所があって、一人の通過に1分かかると100人の団体が来ると通過に100分かかる。これでその団体が後続の登山者に先を譲れなければ100分待たせることになる計算だ。
100人の団体となると追い抜かしも困難だし危ない。
これが、5人の個人グループが20組来ていたとしても、同じようには渋滞にならない。
グループ同士の間隔が5分以上空いていれば、多少時間のかかる初心者がいても後続のグループがこの箇所にさしかかるまでに通過完了する。
こうした理由で、大きな団体で登山をすると、たとえ足の揃った人ばかりの団体でも渋滞を起こして他の登山者に迷惑となる。
登山専門のツアー会社が登山雑誌で募集しているようなツアーの場合は人数も比較的少なく足も揃っている場合が多いのであまり問題はないのだが、一般旅行会社が新聞などで大人数集めるツアーは大変だ。
観光バスを何台も連ねて同じ時間帯に集中して100人以上なんていうのがある。
たとえマナーが良く足の揃った人ばかりでも、100人で動けばそれだけで上記のような渋滞を引き起こすし、自然へのダメージも大きい。
さらに、こうした大団体ツアーは、旅行会社の宣伝で普段、自分自身で個人登山の経験がほとんどない人がたくさん集まるので、歩くペースの極端に遅い人、岩場などで動けなくなってつかえてしまう人が多く、団体の外が見えないので他の登山者に道を譲らない人が混ざる、普通の登山者が1分で通過するところを何倍もかかってしまう人もいる。
数人のグループなら他の登山者に先を譲ることができるのでゆっくり行動しても構わない。しかし、大きな団体は追い抜かしができないし、反対から来る登山者とのすれ違い難しくなる。向こうから何百人もの団体が途切れなく来れば狭い登山道では前へ進めなくなる。

ツアー会社は、登山道のキャパシティに対応して団体の人数を抑制すべきだと思う。
何百人もを一度に登らせずに、日時を分散して、出発もたとえば10人くらいまでの小グループに分けて時間差をつけて出発するなど工夫すべきだと思う。