電力会社へのお問い合わせ文例

東京電力以外の電力会社を想定して企業へ送る文書として失礼のない質問文書を作成してみた。
質問5については、質問相手となる電力会社によって、取り上げる事例がかわってくる。
下記は関西の場合。

1.御社は、今後何十年と原発を無事故で運転し、何千年何万年と放射性廃棄物を安全保管する自信と能力があるとの企業判断をされていると受けとめていますが、それに相違ないでしょうか。
2.また放射性廃棄物の保管を外部委託される場合は、委託先の永続的な保管、安全管理がどのような形で保障されているのかは、委託者である御社が責任をもって保障すべきことであると考えますが相違ないでしょうか?
3.福島原発と同規模の事故を御社が今後数十年以内に起こす確率は低いとは考えていますが、世界の原子力発電所の平均的事故発生確率と日本の自然条件から考えますと、ある程度のレベルの事故が発生する可能性は否定できないと私は判断しています。その場合、たとえ軽微と御社が受けとめる事故の規模であっても、原発立地周辺の農漁業や観光に大きなダメージを与えるかと思います。その場合の、補償および環境の回復について御社がどのような対策を取られているかお答えください。
4.原子力発電は、多数のメーカーや施工会社の技術と部品の組み合わせであり、航空機事故が、運行会社の努力だけでは0に出来ず、機体メーカーや管制施設の運用等の要因で起こる場合が多いことと同様、原発事故もメーカー、協力会社の仕事が完全であることを前提にして初めて電力会社の無事故への努力が可能になると思われます。御社におかれましては、原発の安全性確保を公式に表明されていますが、御社の取引先の業務の完全性につきましては御社が確認し保障していると考えてよろしいでしょうか?
5.美浜原子力発電所1号機において1973年3月に燃料棒折損事故が発生した際、御社が4年近く公表しなかったとの朝日新聞1976年12月8日付朝刊の報道がありましたが、この経緯についての御社見解をお知らせください。
6.御社が発電事業において、より経営上のリスクの小さい発電手段の開発、移行を進め、今回、東京電力が招いたような原子力発電所事故による対社会的な損害と補償負担および企業価値の低下に陥る危険を事前に回避されることを期待しております。その期待にお応えいただけることを条件として、貴社のご繁栄をお祈り申し上げます。


これへ関電から回答をお送りいただいた。
法令という言葉が頻繁に出てくる。法令で定められた対策、規則に従っていると書かれている。しかしながら、これさえ守っていれば安全という法令、規則を作る能力を誰が持っているであろうか。この回答は、薬害などの事例で企業側が出す文書に似た文体といえる。すなわち、厚生労働省が認可した薬品であり、厚生労働省が安全なものであると認可したことに従っているので、一企業としては危険予測できず過失はないとするスタンスである。国の法令と規則に従って運転していて事故が起こったら、それは国の過失ですというスタンスである。なお、放射性廃棄物については、自社の責任外で、国が責任を持つ部分との回答である。このように原子力というものは、国が規則を決めて、電力会社に作業委託しているような特殊な業務である。


弊社HPへのお問い合わせありがとうございます。
 お問合せいただきました6点につきまして回答させていただきます。

1について
  今後の原子力発電所の運転につきましては、安全を最優先にし、
 安全・安定運転に努めてまいります。放射性廃棄物の処分につきましては、
 関連の法令に従い、廃棄する事業者において長期的な安全評価を含む
 事業計画の検討に取り組むと考えております。

2について
  放射性廃棄物につきましては、実用炉と別の規則が定められており、
 国(原子力安全・保安院)および廃棄事業者がその事業の責任を持つと考えま
す。
 事業者の取扱いについても、関連の法令に規定されています。
 (核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律など)
 処分した廃棄物の保管、安全管理等については、廃棄事業にかかる法令等
 にもとづき、許可を受けた事業者が主に行うと考えます。

3について
  原子力発電所の安全・安定運転に努めるとともに、
 今回の福島第一原子力発電所事故を踏まえて、緊急安全対策を実施しており、
 今後も引き続き、事故の内容が詳細に分かる段階に応じて、
 ソフト面やハード面を含めた対策を適宜実施していくことで、
 原子力発電所の安全確保に万全を期してまいります。

4について
  原子力発電所における安全のため、関連の法令にも定められている
 品質保証を実施しております。
  品質保証マネジメント・システム(QMS:QualityManagementSystem)
 を導入しており、これには調達先の妥当性確認も含まれており、
 社内ルールを定め、原子力発電所の保安活動にかかる取引先の妥当性を都度評価
して、
 契約、工事の実施などを行っています。

5について
  過去にこういった報道があったのは事実であり、以後、このようなことが起こ
らないよう、
 引き続き原子力発電所の安全・安定運転に努め、発電所の安全確保に万全を期し
てまいります。

6について
  貴重なご意見として賜ります。ありがとうございます。

関西電力株式会社
地域共生・広報室