ベルリン ドイツ オペラ<Klang der Welt >作曲コンクール2位

2010年5月31日(月)20時開演  ベルリン ドイツ オペラ ホワイエ 
The composing competition “Klang der Welt - Ostasien” of Deutsche Oper Berlin 
“Klang der Welt - Ostasien” Chamber music in East Asia VII
Monday, 31.05.2010, 20:00 h Foyer of Deutsche Oper Berlin
フルート、ファゴット、ヴァイオリンとチェロの為の4重奏曲「海流の巡る所2」作品102(初演)
Quartet for Flute,Bassoon,Violin and Cello “Where the ocean current passes 2” op.102
演奏:ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団メンバー
Members of“Orchester der Deutschen Oper Berlin”
The composing competition “Klang der Welt - Ostasien” of Deutsche Oper Berlin  2nd Prize
2.Preis des Kompositionswettbewerbes,Getiftet vom Foerderkreis der Deutschen Oper Berlin
ベルリン・ドイツ・オペラ<世界の音・東アジア>作曲コンクール 第2位入賞
コンクール結果:
1位;Sung-Hyung Yun 2位:近藤浩平 入賞:Jinhyung Chung
入賞の3作品が、下記の演奏会会場で当日発表され初演されました。 (演奏会告知には入賞者名の記載はありません)http://www.deutscheoperberlin.de/?page=spielplandetail&id_event_date=4664056
コンサートでは、入賞3作品のほか,寺内園生「Narcissus」、南聡「Flash Organism-b op32/2, Heera Kim“Mal”が演奏された。(サイトに掲載されているTan Dunの「シルクロード」は歌手不調の為、演奏されませんでした)
Sung-Hyung Yun氏、寺内園生氏、Heera Kimの3氏が演奏会に出席されていました。
審査員:Donald Runnicles, [Conductor]  Kirsten Harms [Artistic Director, Deutsche Oper Berlin]  Gisbert Nather, [Composer]
Wolfgang Grevesmuhl [Leader of the orchestra, Deutsche Oper Berlin] Helge Bartholomaus [Chamber music representative, Deutsche Oper Berlin]
Andreas K. W. Meyer [Literary director, Deutsche Oper Berlin]

プログラムPDFダウンロード

今回のコンクールの対象は、東アジアということで、中国、日本、韓国の3カ国の作曲家が募集対象となっていた。
演奏会には、第1位のSung-Hyung Yun氏(ソウルのYonsei University,Professor of Composition)
作品が演奏された、Heera Kim氏、寺内園生氏も出席されていた。

このコンクールは、歌劇場の管弦楽団メンバーがホワイエで行っている室内楽シリーズ<Klang der Welt>の一環として行っているもの。募集や広報は地味で、歌劇場で配られているオーケストラの年間プログラム冊子には記載されているが、今回の募集も、日本作曲家協議会の会報で知ったもので、おそらく、対象国の作曲家団体に通知する程度の広報であったようだ。一般の聴衆に世界各地域の音楽に視野を広げて聴いてもらうシリーズであって、基本的に現代音楽主体の催しではない中で、2004〜2005年のベネルックス3国のシーズン以降に作曲コンクールが開催され、毎年のシリーズ最終回でコンクール入賞の新作が紹介される趣向になっている。

<Klang der Welt>は毎年、特集地域を決めて開催されている歌劇場ホワイエでの室内楽演奏会シリーズ。
1998〜1999年 イタリア
1999〜2000年 オーストリア
2000〜2001年 北欧5カ国
2001〜2002年 フランス
2002〜2003年 イギリス
2003〜2004年 ベネルックス3国
2004〜2005年 スペイン、ポルトガル
2005〜2006年 東欧
2006〜2007年 ロシア
2007〜2008年 ブラジル・メキシコ・アルゼンチン
2008〜2009年 アメリカ合衆国
2009〜2010年 中国、日本、韓国
毎年の各シリーズについて5〜7回の演奏会が開催され各地域の音楽が古いものから新しいものまで紹介されている。
たとえば、イギリスの年であれば、エルガーウォルトン、ブリス、パリー、ヘンデルマルコム・アーノルド、Lutyens、グースンス、ゴートン・ジェイコブ、ジョージ・マクファーレン、ブリテン、バークレイ、バックス、スタンフォード、エセル・スミス、シリル・スコット、グレインジャー、ブリッジ、アシュトン、Holbrook、Prinz Alber von Sachsen-Coberg-Gotha,リチャード・ロドニー・ベネット、ファーガソン、ヴォーン=ウィリアムス、ハウエルズ、パーセル、オンスロー、Douglas Victer Brown(1950生)、ディーリアス、バートウィッスル、ピーター・マックスウェル・デイヴィス、ホルストという作品が並んでいる。CDを沢山コレクションしているようなイギリス音楽好きクラシックファンならたまらない曲目であるが、イギリスの現代音楽の現況を紹介するような趣旨のものではない。
イタリアの年であれば、べリオやルカ・ロンバルディアメリカの年なら、エリオット・カーター、アダムス、ライヒフィリップ・グラス、Kerry Turner(1960-)というような曲目が並んでいて、各地域のクラシック音楽を紹介する一般の音楽ファン向けのコンサートの中で適当な塩梅で現代モノも紹介していこうという企画になっている。

2009〜2010年の東アジア特集の中で日本の作品にあてられた1月25日の演奏会を見ると下記のような曲目になっている。

Takashi Yoshimatsu [*1953]
Atom Hearts Club Quartet op. 70 [1997] for string quartet

Maki Ishii [1936 – 2003]
Fagott-Rhapsodie II op. 114 [1999]
Ode an Johann Wolfgang von Goethe for bassoon quartet

Motoki Takeda [*1974]
pourparlers [2005] for bassoon, viola, violoncello, harp

Yuko Tagashira [*1957]
Concerto for bassoon and three violoncelli [2003]

Toshi Ichiyanagi [*1933]
Metamorphosis [1999] for bassoon quartet

Toru Takemitsu [1930 – 1996]
A Way a Lone [1980] string quartet no. 1

3月29日の演奏会を見ると下記のようになっている。

Akira Miyoshi [1933]
Conversation [1962] for Marimbaphon

Toshio Hosokawa [1955]
Herbstlied (2001) for clarinet and string quartet

Toru Takemitsu [1930 – 1996]
Between Tides [1993] for piano trio

Takashi Yoshimatsu [1953]
Three white Landscapes [1991] for flute, bassoon, harp

Keiko Abe [1937]
Wind Across Mountains [1997] for zwo Marimbaphons

Isao Matsushita [1951]
»Go – Un« [1985] 5 Buddhist aphorism for violoncello, flute, clarinet, bassoon, percussions, harp

4月26日の回には、
Kazuko Hara [*1935]
Quintet [1970] for oboe, horn, violin, viola and violoncello
がある。

今シーズン取り上げられた日本の作曲家は、
吉松隆石井真木、武田モトキ、田頭優子、一柳慧武満徹三善晃細川俊夫、安倍圭子、松下功原嘉寿子、寺内園生、南聡
という顔ぶれ。

毎年の募集対象国が限られるので、作曲家側からすれば、自分の地域が対象になる年は1度しかないわけで、このコンクールに日本の作曲家が応募できる機会は、今シーズンしかなかったということになる。企画が世界一巡して企画が日本対象に戻ることがない限り、私の前にも後にも、このコンクールに日本人作曲家が入賞する機会はないということになる。(これは、作曲家諸氏の間では「応募先」としてのコンクールが話題にのぼる機会が限られるので、各地域の現代音楽作曲関係者の中でのコンクールの知名度は低いということにはなるだろう)
演奏は、ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団のメンバーが担当するので、応募規定上、通常のオーケストラが対応できる範囲の奏法ということになっている(特殊奏法がNGとしているわではない)。現代音楽のスペシャリストのソリストが演奏するわけではないことと、選考委員が指揮者やオーケストラ側主体なので、現代音楽関係団体の主催する作曲家が選考の主体となる多くの作曲コンクールとは傾向の違いがあると推測される。

ちなみに、次のシーズンのコンクールは募集対象が、チリ、コロンビア、キューバウルグアイベネズエラになっています。