ヴィラ=ロボス ブラジル風バッハ全曲演奏会

東京へ日帰り往復
開演2時 終演7時 
ヴィラ=ロボスのブラジル風バッハ全曲
至福のひととき。

20世紀の現代音楽作曲界の主流は、ドビュッシーシェーンベルクの流れが中心に動いていたように思う。
しかし、21世紀の音楽にとって、ヴィラ=ロボスは重要な「手紙」だと思う。
が、鶴原勇夫さんが聴きに来られていた以外に、知っている現代音楽の作曲家諸氏は会場でお見かけしなかった。サントリーホールホールでグリゼーなどやれば、会場に沢山、現代音楽の作曲家諸氏を見かけるが、皆、揃って1970年あたりの音楽を熱心に聴き、若い作曲家諸氏が、一つ上の世代の現代音楽の大家に素直に憧れるのは、少々保守的ではないかと思う。
ほんとうの前衛は、一つ上の世代には反発するものだと思うが・・・。

客層は、普段のクラシックファンとは少し違う層が多いように思う。
エグベルト・ジスモンチバーデン・パウエルを聴くような人も多かったのではないかと思う。きっと、「クラシック」や「現代音楽」ではないところで素晴らしい音楽活動をしているような音楽家諸氏が沢山聴きにきていたのではないだろうか。
ヴィラ=ロボスは音楽ジャンルを越えている。(ミヨーだと微妙に越えない)

ヴィラ=ロボスの音楽は各パートが生き生きしている。
リズムのアンサンブルになった素晴らしいオーケストレーションに、「息の深い」メロディが歌う。
第2番でも軽い明るい音楽のようで、よくある深刻ぶった表現主義の音楽よりも、はるかに豊かで深い。人が生き、生活している実感をともなった音楽。
思いっきりロマンチックに演奏された時代のバッハのようなところがあるのだが、それがすみずみまでブラジルでもあって、乾いたネオ・バロック様式新古典主義にならない不思議な音楽。
没後50年で著作権上が切れることで、おそらく演奏頻度は非常に増えるだろう。
放送や映画、イベントなどでも使われてかってのサティのように近年のブームが起きるのではないか。どこかの洋酒メーカーがCMで第5番など使えば大層、普及しそうだ。
ただ、歌手にとってポルトガル語が難しいが・・・。

民衆的で大衆的でありながら、あくまで新しい20世紀の音楽。
ラフマニノフばりの甘美なメロディがある一方で20世紀の新しい音楽として内容に妥協はない。
演奏は、楽譜の音価を正確に再現するというだけでは駄目で、リズムのアンサンブルがはばたく必要がある。クラシックの古典、ロマン派ばかりを弾いていては、このリズム感は捉えられない。

今回はブラジル風バッハ全曲であったが、ヴィラ=ロボスがさらに大胆であった時期に作られたショーロスの連作も、生で聴きたいものだ。
生のオーケストラでのショーロス、どんなにエキサイティングだろうか。

2009年8月22日[土]14:00 コンサートホールヴィラ=ロボス没後50年記念《ブラジル風バッハ》全曲演奏会

[出演]
指揮:ロベルト・ミンチュク
ソプラノ:中嶋彰子
フルート:斎藤和志
ファゴット:黒木綾子
ピアノ:白石光隆
新国立劇場合唱団[合唱指揮:三澤洋史]
東京フィルハーモニー交響楽団
司会:加藤昌則
[曲目]

エイトル・ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ
第6番(1938) 〜フルートとファゴットのための
第9番(1945) 〜無伴奏合唱のための
第4番(1930-1941) 〜ピアノのための 休憩 約15分
第1番(1932) 〜8本のチェロのための
第5番(1938) 〜ソプラノと8本のチェロのための 休憩 約30分
ロビーコンサートあり(ギター:益田正洋)
第3番(1934) 〜ピアノとオーケストラのための
第8番(1944)〜オーケストラのための 休憩 約15分
第2番(1933) 〜オーケストラのための
第7番(1942) 〜オーケストラのための