芸文センター管弦楽団

兵庫県立芸術文化センター管弦楽団 第22回定期演奏会

藤倉大:クラッシング・ツイスター
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
ストラヴィンスキー火の鳥 原典版

藤倉大の作品の解説に大いに期待して聴く。
DJがターンテーブルを回す効果、ジャズやポピュラー音楽の要素も盛り込まれているという解説に、どのような現代的なスリリングな雑種性を実現しているのか期待する。
分割されたされたオーケストラは非常に明晰に鳴って、暗い情感もなく、クールでエネルギッシュで洗練された現代音楽。すばらしい力量。
しかし、ターンテーブルの効果を与えられる肝心の素材が、現代音楽らしい上品さというかエリート好みの20世紀現代音楽的音響属性の範囲に抽象化されて露骨なポピュラー音楽性を避けた範囲に抑制されているので、エフェクトの驚きが今ひとつストレートに感じ取れない。
別のLPがターンテーブルに載っていて、別のものをキュキュとつなげていくスリリングさ、スクラッチ感覚が、もっと通俗的に正面切ってエンタテインメントな曲に仕上がっているのかと期待したが、これでは解説なしでは大多数の聴衆は仕掛けを感じることができないのではないか。
アイヴスやベリオなどの多様式的なコラージュやルーカス・フォスなど上の世代のわかりやすさのほうが刺激的なように私は思った。
提示された素材の変形ももっと生々しく非現代音楽的、非クラシック音楽的な変形、例えばラップ的なリピートなどが節操無くおおっぴらにやられたりしたらもっと楽しいだろうにと思ってしまう。
ともあれ、藤倉大氏は、現代音楽らしい格好良さと行儀の良さを捨てて、聴衆を意識する外向性をさらに強めると、現代音楽のイメージを崩すほど、大きなインパクトをもたらす力量のある人だと思う。これから、どこへ進むのか注目。


この作品より、先日の、いずみホールでの新作のほうが、より多くのお客さんを楽しませていたように思う。


帰りに長谷川慶岳さんと飲んで、長時間、音楽の話しをした。