ベートーヴェン

ベートーヴェンっていい人だと思う。「さあ、みんな、この先で方向転換するぞ、せ〜の ほい」という音楽の運びがある。
ベートーヴェンって、曲を組み立てる時に、アンサンブル全体のベクトルを揃えて一気に変えるので、全体として大きな動きになりますね。「全員 上へ登れ、てっぺんついたら、全員たちどまってから、一斉に飛びおりて、下についたら右を向け!」みたいにマスゲームになっている。

弱音でとことん引きつけておいて、どかんとやる。それも、王道のおどかしかたで、くるぞくるぞと期待させてお約束のびっくりが決まると満足という仕掛け。

一方、フランセは、それぞれのパートがいろいろな方向の話をしていてものすごく一人一人は賑やかで活発だけど全体としてはシチュエーションは大きく変わらないので井戸端会議がずっと続いているようなかしましさ。

ベートーヴェンとフランセとコダーイの弦楽3重奏を、桂教会のキオスクコンサートで聴いた。

左手のピアノの作曲

左手のピアノ曲の演奏にもし右手を使ったら楽に弾けるのかどうか。

左手のピアノ曲の作曲は、親指が右の高い音を叩き、小指が低い音にくる、左手の指の配置を前提にした書法なので、右手の指の配置で弾くと、作曲家が考えているのと違う指使いで弾く結果になります。左手の親指で弾く音を、右手の小指で弾くときれいに鳴りません。試しに両手の曲の左手パートを右手で弾いてみたら弾きにくいことがわかると思う。 ある両手のピアニストの方に右手の使用のを許可しましたが、結局、左手で弾いたほうがきれいに鳴るし弾きやすいので、結局は本番では左手で弾いておられました。押さえられる和音も左手と右手で変わりますので、左手では弾けるのに右手では演奏困難という箇所もでてきます。

左手のピアノ曲の作曲は無伴奏チェロの作曲に似ています。バッハの無伴奏チェロの高音部をヴァイオリンに割り振ってデュオにしたら、一つのパートで音域が広い動きという効果が消えますね。左手のピアノ曲を両手にわりふると、左手が広大な音域を動くことによる運動の幅広さ、広がり、振幅の大きさという特質が失われる。

チェロ独奏を、チェロ2台に分けて演奏しても響きや音楽の流れが変わる。左手のピアノと両手のピアノでは、モノは同じピアノの鍵盤でも違う響きかたをする楽器になります。音楽では、前後関係が重要だ。

左手のピアノと両手のピアノは実質、別の楽器のようなもの。
左手だけで弾くのと両手で弾くのとでは、音質や共鳴が変わる。左手が低音から高音部へあがってたどり着く音と、右手で弾かれる音はフレーズの中で位置付けが異なります。ペダルの使い方も違ってきますから、音質や共鳴も変わります。鍵盤を両手で押さえての持続と、ペダルを使っての持続で違いがでてきます。左手で弾くのと右手に受け渡して弾くのでは運動や共鳴が異なるので音質が変わる。

私の曲の場合、左手で弾くことを前提にした書法なので、右手で弾いても効果が変わらない箇所はあるとは思いますが、かなりの部分は右手ではものすごく弾きづらいと思います。

左手ならではのピアニズムを掘り起こしていない、左手特有の運動性に基づいていない、どちらで弾いても違いのでない、単に片手で弾ける音数にしたパッセージの場合は、右左どちらで弾いても大差ないと思いますが、左手を前提に発想されている曲なら、右手に分けて弾く音楽的メリットはほとんど無いかと思います。

ホリガー作曲の室内楽 サントリーホール2015年8月22日

ホリガーの饒舌かつ冗長性の高い室内楽をたっぷり聴き、ご本人の長いアフターコンサート話を聴いてから夜遅く、新幹線で帰宅。短くも濃厚な東京訪問であった。
ホリガーは、アフタートークで、すべての音に自己の感情を結び付け、自己が感情を伝える言葉をのせたワーグナーを最悪だと言っていた。
大戦前の濃厚甘美で英雄的個人感情表現にあふれた後期ロマン派音楽が、国家民族の鼓舞、扇動に利用されたことへの反動が、戦後の前衛のバックグラウンドにあるという話は、何度か聞いたことのある話であり、時代背景の理解としては、納得しやすいストーリーである。
しかし、今まで、サントリーのサマーフェスティバルに登場した作曲家の中では、ご本人が最悪と言ったワーグナーにもっとも近い音楽であった。
ワーグナー同様、テキストへの個人的思い入れが強烈であり、最後には、とうとう、作品の演奏終了後に、作曲家自身がテキストを朗読したので、ベルリオーズ幻想交響曲の後で、作曲家本人がレリオを語るようであった。
音楽は作品全体で全パートが饒舌に語りつくそうと重なりあいうごいていくので、レーガーの複音楽のような情報量の多さに加え攻撃的なまでに大きな身振りで動きまくり、さらにプレイヤーとして終始どの音にもエネルギーを吹き込もうというホリガーのエネルギーが各パートの奏者にも要求されている。
しかしながら、延々と続くクライマックスと各パートのどの部分もめいっぱい主張しあうので、音楽はエネルギーレベルの高いところで飽和してだんだん定常的になってくる。この定常的な飽和と冗長は心地よく長時間続きワーグナー的であるが、ワーグナーが大部分は心地よいハーモニーのおしてはかえす波で聴衆を包み込むのに対し、ホリガーはオーボエという音の始まりと終わりが明確でアタックの明確な楽器の性格で、常に耳をつついて注意を向けさせ続ける。
この絶え間なく動き続ける忙しさは、バッハやゼレンカ室内楽に匹敵し、ホリガーがバロック音楽の演奏者でもあることを思い起こさせる。
ヴィオラソロ作品での絶え間ない動きは、あたかも、一つのヴィオラワーグナーの序曲の波打つ弦楽のオーケストレーションに対抗しようとするような欲求が感じられた。
アフタートークで、ホリガー氏の切れ目なく止まらなくなる話は、終止形を拒否していて、話題が切れ目になるかと思った瞬間に、接続詞がトリスタン和音のように繰り出されて大変であった。
この毎年夏のサントリーホールのサマーフェスティバルは、現代音楽の主流として認知され、財団が安心して指名できる現代音楽界の中でお墨付きの日本の作曲家達が、現代音楽ご本家のお世話になった巨匠をお迎えして感謝を伝えるセレモニーとして機能していて、さらに、その巨匠が、日本の巨匠である武満への賛辞と感謝を口にして日本の現代音楽関係者のプライドをくすぐるというイベントにもなっている。
お世話になった巨匠への賛辞と感謝を示し、私も本場の現代音楽の価値を理解し感動する知性と感性をもったすぐれた現代音楽界の一員ということを表明するのが場にふさわしいというところではあるが、これが率直な感想である。

ブダペスト祝祭管弦楽団の日曜の室内楽シリーズ

ブダペスト祝祭管弦楽団の日曜の室内楽シリーズで、私のヴァイオリンと打楽器のための協奏曲が演奏される予定です。2015年1月11日、お近くの方は是非。私も聴きに行こうと休暇調整します。
http://www.bfz.hu/en/events/event-20150111-1700-en/

地図は
http://goo.gl/maps/Eymzc

ミネソタ大学での打楽器作品初演

5月3日にミネアポリスミネソタ大学で打楽器ソロの為の新作「暖かな還流に乗って」がマリリン・クラーク・シルバさんの演奏で初演されます。スチールドラムを中心にした作品です。シルバさんは、スチールドラムバンドをしているので、思い切ってスチールドラム主体の曲を書く機会になりました。スチールドラムで、微妙に東洋的な音階とリズムの新作。拍節にのらずに繊細に歌う日本民謡的な歌。さて、どのような演奏になるか楽しみです。遠隔地で私も聴きに行けませんが、後日、映像、録音は送ってくださるようです。
https://events.umn.edu/Doctoral-Recital-Marilyn-K-Clark-Silva-percussion-033097.htm

Cuatro Puntosのヴィオラとチェロの2重奏曲集うのアメリカ初演

2014年3月29日に、Cuatro Puntosという、アメリカ、コネチカットの若い音楽家達の演奏団体が、私の「ヴィオラとチェロのための2重奏曲集」をアメリカ初演したようです。

Cuatro Puntos
http://www.cuatropuntos.org/


Concert For Bolivia
West Hartford, Connecticut

SATURDAY, MARCH 29, 2014
7:30pm- Free Admission
Suggested donation $10/adult, $5 student to support our outreach tour to South America.

THE UNITARIAN UNIVERSALIST CHURCH OF WEST HARTFORD
433 Fern Street,
West Hartford, CT

MARY MATTHEWS flute
KEVIN BISHOP viola
PABLO ISSA SKARIC cello
BRANDON NORTON trumpet
JOSHUA HORSCH piano
HOLLY BISHOP string bass

PROGRAM

MAURICE DURDFLE: Prélude, Récitatif, et Variations for flute, cello, piano
HOWARD BUSS Time Capsules for flute and trumpet
KOHEI KONDO Duos for viola and cello
GEORGES ENESCO Legend for trumpet and piano
FRANTISEK KOSZWARA Sonata No. 1 for viola and bass
LEROY OSMON: Concertino for trumpet and viola
AMY CHENEY BEACH: Two Pieces for flute, cello, piano
NICOLE CHAMBERLAIN: Elasticity for flute, viola, cello